第12回 学生スタッフレポート

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「道路問題」からの「民主主義」の模索ー小平都市計画道路
3・2・8号線をめぐる住民投票と、身近な自然を守る活動

水口 和恵 氏(小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会共同代表)

こんにちは!
9月27日、「総合」第13回の講演者は水口和恵さんでした。水口さんは「小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会」の共同代表を務めていらっしゃいます。今回は、ここ小平の地で行われた住民投票と、玉川上水の自然を守る活動に焦点を当てて、お話をしていただきました。

水口さんは、多摩地域の消費者団体のネットワークである、多摩コンシューマーズの勉強会で、初めて道路問題に出会ったといいます。この道路問題とは、1962年に作られた都市計画で、私たちの津田塾大学のすぐ西側に、新しく小平3・2・8号線という道路を建設するというものです。計画通りに作られるとすると、玉川上水が分断されるほか、雑木林も壊されてしまいます。水口さんは、56年前に作られたこの計画が、現在でも本当に必要なのか、疑問に思ったといいます。玉川上水に残された貴重な自然を壊してまで、作る必要のある道路なのでしょうか。

水口さんはこの疑問を放置せず、地域に住む住民同士で道路問題に向き合っていきます。道路工事にあたって、2010年に小平市は説明会を開いたそうです。しかし、その会は「ご理解とご協力をお願いします」というスタンスで、住民は一方的にお願いされる立場でした。また、住民の声を集める会も開かれましたが、形式的で、話し合いとは程遠いものであったといいます。なんとかして住民の声を反映させることはできないのか。そう考えた末、水口さんたちは、小平で住民投票を行うことに決めます。そのために「小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会」を結成しました。これが2012年のことでした。

住民投票を行うためには、署名を集めなければなりません。私は、署名といえば、名前を書くことというイメージしか持っていませんでした。しかし実際には、氏名、住所、生年月日に加えて、印鑑か拇印が必要となります。また、署名を集められるのは、事前に届け出た者だけで、期間は1ヶ月。署名に必要な記入事項がここまで多いと、それほど関心のない人は協力しないだろうと思います。そのような中でも、水口さんたちは必要総数の2倍以上もの署名を集めました。そして、直接請求による、都内初の住民投票が行われました。しかし結果は、市長が直前に成立要件を追加したために、非公開かつ焼却処分されてしまいました。住民たちが努力して声を集めようとしたのに、こんなことがあって良いのか、と市の対応に怒りを感じます。ですが、小平の住民投票を知ったことで、自分の住む地域の在り方を考え、声をあげることの大切さを学びました。

水口さんは、「このまま玉川上水の自然が壊されて良いのか?そこまでして道路を作る必要があるのか?」という疑問を持ち続け、行動されています。水口さんたちの動きがなければ、何の考慮もなしに、今ごろ玉川上水の自然は破壊されていたかもしれません。私たちは、身近なところで何か疑問・異議を持っても、それを声に出して自ら行動を起こしていくことは少ないように思います。それが公共の問題となれば尚更です。けれども、自らの気づきを他者と共有することで、一緒に解決策を考えていくことができます。そして、少しずつでも自分たちの地域のことを、自分たちで考えることができるのではないでしょうか。事実、水口さんたちの企画する、玉川上水や付近の雑木林での散策・幻燈会には、大人から子供まで多くの人が参加しています。「政治だ、民主主義だ」と固く考えることなく、まずは地域のことを知って、積極的に関わっていきたいと思いました。

国際関係学科3年 おいも

コメントシートより

  • 小平市の自然が、住民によって守られていることを今日初めて知った。思っているだけでは何も現状は変わらないことを改めて感じた
  • 今ある環境・生物を大切にしていくためには、住民一人一人の意見を発信することが大事だと思った
  • 水口さんたちの行動・努力に驚くとともに、民主主義の中でなかなか民意が反映されないもどかしさや、議会や都のやり方に疑問を覚えた
  • 行政だけで決めてしまうのではなく、住民が主体となって決める住民投票の大切さを知った
  • 「民主主義」という言葉は授業やテレビでよく耳にするが、今まで他人事のように思っていた。しかし今日の講演を聞き、思っていたよりも身近なものであると感じた
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