深谷 健 教授

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深谷 健先生 深谷 健先生

高校生へのメッセージ

大きなものであれ身近なものであれ、課題に当事者として直面したとき、傍観することなくそれに向き合い、さらにその解決をも志向するのであれば、どうしても「力」が必要となります。おそらくそれは、複雑な課題を解きほぐす「力」であり、客観的な視点から事象やデータを分析する「力」であり、あるいはまた、公平な視点から他者と対話する「力」なのかもしれません。具体的な公共的課題を素材として共に学び、課題に立ち向かう基礎「力」を身に付けてもらうこと。それを願っています。

私の研究

社会の課題解決を期待される公共政策を理解するために、2つの視点を踏まえて研究を行っています。

ひとつは、前向きに課題解決手段の可能性を探ることです。複雑に絡み合う社会課題を解きほぐし、その課題を将来に向かって改善の方向に導くにはいかなるアプローチが役立つのか。こうした問題関心から、「規制」や「情報」といった様々な政策手段がどのように社会に受け入れられる(あるいは逆に受け入れられない)のかについて、データ等の「証拠」をもとにした実証研究を行っています。たとえば、代表的な政策介入である「規制(ルール)」は、公的な権限をもとに社会秩序を形成する有力な手段であると同時に、社会に対して一定の負荷も課します。ゆえに、社会状況が変化すれば当初期待した効果を持ち続けるとは限らず、ともすると逆の効果すらもたらします。「規制のトレード・オフ(あちらを立てればこちらが立たない)」とも言えるこうした政策の特徴を明らかにしつつ、より柔軟なアプローチの可能性を探っています。また、近年は「情報(メッセージ)」というよりソフトな政策手段も注目を集めています。政府が社会に提供する情報内容によって、市民がより有意義な行動を選択できるとすれば、これを上手く活用できないものか。迅速な政策情報の開示や受け手に響く啓発手段の在り方などがここに含まれるでしょう。

とはいえ、仮に理想的な政策手段が見つかったとしても、なかなかその通りに政策が作られるとは限らないというその限界を深掘りする視点も重要だと考えています。「証拠による政策形成」の必要性が日本でもしばしば話題となりますが、このことが課題となること自体、専門性に基づく客観的証拠と多様な意見を前提とする民主主義的政策形成の在り方にもともと親和性があったとは言えないことを示唆しています。そこで、この2つ—証拠と政策形成—を架橋するにはどのような条件が必要となるのかについても、政治と行政の仕組みを踏まえつつ多角的に考えています。
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