近藤 宏 准教授


高校生へのメッセージ
大学では、自分が考えたいことを探し、そのテーマや関連するテーマを広く深く考えることができる環境があります。講義で学ぶ事柄、アイディア、考え方を講義室や大学の外へと広げ、身の回りから地球の各所まで、さまざまな世界を新たな仕方で受け止め、そこでできることが増えるよう学んでいきましょう。
私の研究
専門としている学術分野は文化人類学です。文化人類学はフィールドワークを核心的な方法とする学問分野で、ラテンアメリカ地域の先住民の人びと、具体的にはパナマとコロンビアに暮らすエンベラという先住民族のコミュニティをフィールドワーク先としています。
パナマでは、先住民に権利が認められた領土にあるコミュニティを訪れています。権利のある地域に暮らすことは、「伝統的」とされる面だけでその生が成り立つことを意味しません。権利があるがゆえに、複雑な社会状況が生まれています。たとえば近年では、炭素取引という新たな経済制度に参入するようになるなか、伝統的な森林利用だけでなく植林に新たな社会的意義が見出されはじめています。
コロンビアでは、パナマとは対照的に、伝統的な生活領域では暮らせなくなり、都市部への移動を強いられた人びとのコミュニティを訪れています。背景にはコロンビアにおける武力紛争がありますが、暴力を逃れるための移動によって、先住民の人びとは「よそ者」扱いされる境遇に置かれています。それでもなお、植樹などをとおして、その都市をより生きやすい空間に変える奮闘がなされています。
エンベラの人びとが直面する現代的状況を人類学の知見や方法を活かし、深く理解し考えることが研究の大きな方向性です。目下のところは、植物と人との関わり合いが焦点となる事態が生まれています。彼らが生きる〈いま〉には、熱くなってゆく地球と都市に暮らすぼくたちの〈いま〉と交錯するところがあるようにもおもえます。