伊藤 航多 准教授

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伊藤 航多先生 伊藤 航多先生

高校生へのメッセージ

いまやインターネットを使って情報を引き出して並べるだけなら、小さな子でも容易にできる時代です。だからこそ、身体を動かしてのアナログな情報収集は侮れません。また、そうやって集まった情報を丁寧に交通整理し、そこから自分なりの考えをまとめあげ、他者にわかりやすく伝えるスキルがますます必要とされるでしょう。大学とは、語学力や専門知識だけでなく、そうした「型」を訓練して身につけられる場所です。

私の研究

私はイギリスの人々がどのように自分たちの郷土の歴史や文化風習に親しみ、過去の社会制度や慣習をめぐって議論を繰り広げてきたのかという問題について研究しています。
私が研究対象にしている近現代のイギリスでは、工業化や都市化が進む一方で、社会のあり方をめぐる危機感が高まっていました。そこで人々が歴史や民俗に目を向けたのは、単純に「古き良き時代」のノスタルジーに浸るためだけではありません。たとえば、国土の大部分を領有していた上流階級への批判が高まるなか、地主にとって家系図や古文書を掘り起こして調べることは、土地の所有関係を明らかにして私的財産権を守るという意味で重要でした。一方、この当時のイギリスの都市や農村が直面していた問題に対処するには、私的財産にも介入しうるコミュニティとしての強い行政権限が必要であると考える人たちもいました。彼らはその主張を裏付けるものとして、中世初期まで歴史をさかのぼって、部族社会にみられた自治の風習について明らかにしようとしたのです。
ふつう中学高校などでは、歴史を「過去におこった出来事=事実」として教わってきたと思います。けれども、その「事実」をどうとらえるかには多様な立場があり、解釈の違いが論争を生んできました。私はさまざまなイギリスの郷土史に関する活動や言説を見ていくことで、そこに託された政治や社会をめぐる思想や問題意識を明らかにしていきたいと考えています。
郷土方言に関心をもっていた歴史愛好家の蔵書票
郷土方言に関心をもっていた歴史愛好家の蔵書票
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