北村 文 准教授

津田塾大学は、皆さんが将来こうなりたいとおもえるような、ロールモデルがみつかる大学です。たくさんのことを様ざまな視点から知ろうとする、エネルギーにあふれています。そのなかで考えること、悩むこと、話すこと、書くこと、そして互いに語りあうことをとおして、学ぶ喜びを感じてください。そしていつかあなたも、誰かにとってのロールモデルになってください。

「私」は誰なんだろう、と、ずっと考えてきました。私が「女性」であるとはどういうことだろう、「日本人」であるとは、「バイリンガル」であるとは・・・？　私たちは、自分でこうだとおもっていても他者から違うふうにおもわれることがあり、それで驚いたり傷ついたり、そして同時に、他者を傷つけたり悩ませたりすることがあります。そのように、自己と他者のあいだで生まれるアイデンティティについて、社会学やジェンダー研究、日本研究の視座から研究してきました。私と同じようにもやもやしている人たちの語りを聞くために、東京で、ハワイで、香港で、シンガポールで、フィールドワークを続けています。

多文化化・多言語化が進む現代においては、自分と似たような人たちとだけ交わって暮らしていくわけにはいきません。私たちは、誰かとぶつかったり、そのせいで葛藤を抱えたりすることがさらに増えていく社会を生きています。たとえば学校や職場や地域に、異なる言語や文化の背景をもつ人がいるとき。あるいは家族や親戚のあいだで、異なる言語が飛び交うとき。自分の家のなかで、外国から来た家事労働者を雇うとき。そうした日常生活世界のなかの多文化主義・多言語主義が、現在の研究関心です。