上田 祥代 准教授


高校生へのメッセージ
情報科学は、便利な仕組みをつくるだけでなく、人や社会への理解を深める手がかりにもなる学問です。技術は、私たちの世界の感じ方や、できることを広げてくれる大きな可能性をもっています。目に見えることだけでなく、心やつながりにも関心を向けながら、「情報」を切り口に、新しい視点で人や社会との関わり方をここで一緒に探ってみませんか。
私の研究
人はどのように自己や世界を認識し、他者や環境と関わっているのか——この根源的な問いを出発点に、認知心理学と情報科学を融合したアプローチで、人間の認知情報処理のメカニズムを探究しています。
たとえば、VR(バーチャルリアリティ)やアバターを用い、ふだんとは異なる「拡張された身体」を操作することで、人の感じ方や行動がどのように変わるのかを実験的に検討しています。腕が長くなったり増えたりしたアバターでも、操作を重ねるうちに「これは自分の身体だ」と感じられるようになるなど、私たちの「自己」は、身体と環境との相互作用によって驚くほど柔軟に変化することが示されています。こうした視点から、「身体化(embodiment)」のしくみや新たな身体・自己のあり方を探り、技術と人間の関係性に新しい可能性をひらくことを目指しています。
また、「多様性の認知」に関する研究も行っています。たとえば、複数の人物の表情が並ぶ場面を見たとき、私たちは個々を詳しく見なくても、全体のばらつきや雰囲気を“なんとなく”感じ取ることがあります。こうして知覚されたばらつきは、集団への印象形成や社会的判断、協調に影響を与える重要な情報であり、その認知メカニズムや特性を明らかにしたいと考えています。
技術によって身体や環境のあり方が大きく変わりゆく現代において、「自分とは何か」「他者をどう理解するか」といった問いに改めて向き合うことは、よりよい社会や人間関係のかたちを考えることにもつながります。人と技術の接点に立ち、未来の可能性を切り拓くことをめざして、日々研究を重ねています。