学校法人会計の用語解説
帰属収支差額比率とは
帰属収入から消費支出を差し引いた帰属収支差額の帰属収入に対する割合である。
この比率がプラスで大きくなるほど自己資金は充実されていることとなり、経営に余裕があるものとみなすことができる。
このプラスの範囲内で基本金組入額が収まっていれば当年度の消費収支差額は収入超過を示すこととなり、この範囲を超えた場合は支出超過を示すこととなる。
この比率がマイナスになる場合は、当年度の帰属収入で消費支出を賄うことができないことの反映であり、基本金組入前で既に消費支出超過の状況にある。マイナスの要因が一時的あるいは臨時的である場合を別として、マイナスが大きくなるほど経営は窮迫し、いずれ資金繰りにも困難をきたすこととなる。
学生生徒等納付金比率とは
したがって、この比率は、安定的に推移することが経営的には望ましい。
学生生徒等が減少期に入っている現在では、帰属収入の多様化を図ることも必要となってくるので、高水準で納付金に依存するよりは相対的にこの比率が低いほうが良い場合もある。
なお、この比率に関しては、学生生徒等納付金の内訳及び学生生徒等1人当たりの納付金の水準にも配慮する必要がある。
人件費比率とは
人件費には、教員人件費、職員人件費、役員報酬、退職給与引当金繰入額等が含まれている。しかし、その多くは教職員の人件費であり、その人員及び給与水準等によって、この比率は大きく影響を受ける。
人件費は消費支出のなかで最大の部分を占めているため、この比率が特に高くなると、消費支出全体を大きく膨張させ消費収支の悪化を招きやすい。また、人件費の性格上、一旦上昇した人件費比率の低下を図ることは容易ではない。
なお、この比率だけでなく、人件費の内訳科目である教員人件費や職員人件費の構成比率、教職員1人当たりの人件費の実額等にも配慮する必要がある。
教育研究経費比率とは
教育研究経費の帰属収入に対する割合である。
教育研究経費には、修繕費、光熱水費、消耗品費、委託費、旅費交通費、印刷製本費等の各種の支出が含まれている。また附属病院に関しては医療経費があり、これ以外に教育研究用固定資産にかかる減価償却額がある。
これらの経費は教育研究活動の維持・発展のためには不可欠なものであり、この比率も消費収支の均衡を失しない限りにおいて高くなることは望ましい。しかし、この比率が著しく高い場合は、消費収支の均衡を崩す要因の一つともなる。
なお、高等学校法人等については、教育研究経費と管理経費との区分を行っていない場合もあるので、両者を合算した「経費比率」で分析する必要もある。
流動比率とは
流動負債に対する流動資産の割合である。
一年以内に償還又は支払わなければならない流動負債に対して、現金預金又は一年以内に現金化が可能な流動資産がどの程度用意されているかという、学校法人の資金流動性すなわち短期的な支払い能力を判断する重要な指標の一つである。
一般に金融機関等では、200%以上であれば優良とみなしており、100%を切っている場合には、流動負債を固定資産に投下していることが多く、資金繰りに窮していると見られる。
ただし、学校法人にあっては、流動負債には外部負債とは性格を異にする前受金の比重が大きいことや、流動資産には企業のように多額の「棚卸資産」がなく、ほとんど当座に必要な現金預金であること、さらに、資金運用の点から、長期有価証券へ運用替えしている場合もあり、また、将来に備えて引当特定預金等に資金を留保している場合もあるため、必ずしもこの比率が低くなると資金繰りに窮しているとは限らないので留意されたい。
基本金比率とは
基本金組入対象資産額である要組入額に対する組入済基本金の割合である。
この比率の上限は100%であり、100%に近いほど未組入額が少ないことを示している。
未組入額があるということは借入金又は未払金をもって基本金組入対象資産を取得していることを意味する。したがって、この比率は100%に近づくほうが望ましい。
ただし、会計基準の改正(S62.8.31文部省令第25号)以前基本金の未組入れ措置を採っていなかった法人にあっては、この比率は参考にならない場合がある。また仮に、100%となっていても消費支出超過が併存することがあるので、消費収支差額との関連も併せて分析する必要がある。
(日本私立学校振興・共済事業団発行「今日の私学財政」から抜粋)