阿部 曜子 准教授

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阿部 曜子先生 阿部 曜子先生

研究テーマ/授業名

少ない数のことばで世界を切り取る、詩という形態に関心があります。授業では英詩全般を、研究では近代の礎が築かれた16-17世紀イギリスの作品を中心に扱っています。

高校生へのメッセージ

「英語は難しい」と感じている方、心配は無用です。ことばとは本来(母語であっても!)難しいものです。大学ではことばの難しさに正面から立ち向かう、強靱で柔軟な思考力と想像力を培い、またその際に心強い武器となるスキルと知識を身につけてください。ことばの難しさはそのまま世界の難しさであり、そこにあらかじめ用意された正答はありません。日本語であれ、英語であれ、難しいと感じることばと辛抱強く関わる作業を通して、その背後に隠れている新しい世界に近づきましょう。

私の研究

初期近代(16-17世紀)のイギリスは、現代社会の基礎となる様々な制度、考え方や振る舞いが培われた、遠いようで思いの外近い存在です。表現活動としての詩作についても例外ではありません。物語詩、宗教詩、恋愛詩、風刺詩、複数の詩人の作品を集めたアンソロジー(詞華集)など、その後も長く続くことになる様々なジャンルの作品が書かれ、出版物として広く流通するようになります。新しい形式に従ってことばを並べるためには、書き手が身の回りの事象や人々と新しい関係を切り結ぶことが必要であり、また一方で、変化する世界を描き出すために、新しい形式が生みだされます。

現在私が取り組んでいるマイケル・ドレイトン(1563-1631)は、エリザベス朝からスチュアート朝への過渡期に活躍した詩人です。(ウィリアム・シェイクスピアの一歳年上にあたります。)社会における詩人の役割を強く意識した作品を数多く残していますが、ドレイトンの基盤となった(あるいはドレイトンが基盤として思い描いた)世界が刻々と変化していたために、彼の仕事は複数の新しいジャンルにまたがる、振り幅の大きいものとなりました。文化の中心が宮廷からより広い社会へと変移していく中で、何をどのように語ればより多くの読者に説得力をもつのか、「国民的」な詩人として社会に訴えることができるのか、ドレイトンなりの模索が作品に表れているようです。とくに興味深いのは、彼の詩の語り手が時折示す、朴訥な愚者のポーズです。混乱した社会においては、説教じみた正論も、貴族的な洒脱も有効ではないと判断した末の、ひとつの結論と思われますが、その「朴訥さ」の来歴や社会的文脈の探究を通して、作品の特質や、詩人と時代との関わりについて解明することが目下の課題です。
Michael Drayton,Poly-Olbionより(図像提供:Folger Shakespeare Library)
Michael Drayton,Poly-Olbionより(図像提供:Folger Shakespeare Library)
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